英文契約書基本

~概要~

 海外との取引には日本語で記述された契約書ではなく、ほとんどが英文契約書が使われています。また、英語圏以外の国々との取引、例えば日本とアジアの国との取引においても、どちらかの国の言語ではなく、公平性の観点から英文契約書が使われることが多くなっています。 ただ、国際取引が英語だからといって、単に日本語を英語に翻訳しただけでは足りません。国際取引のルールに基づいた英文契約書を作成する必要があります。 この国際取引のルールとしては、国際商業会議所(International Champer of Commerce. ICC)が定めたインコタームズInoterms (International Commercial Terms)というルールがあります。これは国々の様々な商習慣から起こる考え方の違いや、紛争を防止することを目的として定められたものです。具体的には、商品価格、引渡条件、危険負担、国内運送、輸出入許可の取得及び通関手続遂行、運送契約や保険締結義務が売主、買主のいずれにあるかなどが盛り込まれています。現在はこのインコタームズが英文契約書に使われることが多くなっています。

 また、英文契約書は長く、具体的で非常に細かく、分厚い場合が多いです。日本国内で使用されている日本語の契約書は、そんなに長くなくて、協議事項がある場合が多いですが、英米法では民法や商法などで定められている範囲がせまいため、当事者の間で取引に関してこと細かく記載しておくことで分厚くなってしまいます。

 では、有利な契約を締結するには、どのようにしたら良いのでしょうか?取引相手が作成した長く、具体的で非常に細かく、分厚い契約書の中身を十分精査することなく、サインしてしまっては有利な契約など結べるはずはありません。国際取引の交渉については、当該取引についての詳細についてすべて当事者が合意したのちに契約書が作成されるのではありません。通常は取引の内容の概要がきまると、当事者間で何回も対案や修正などの申し込み承諾が繰り返され、こと細かく分厚い契約書ができます。というようなことから、有利な契約を締結するには自分に有利な条項を含んだ契約書をいち早く作成し、相手方に示すことが大切です。前述のように日本国内での契約書は協議事項を設けている場合が多いため、英文契約書においても規定されていない事項については協議事項で対処するといった考え方は通用しないと思ったほうがいいです。

契約当事者の義務にどのようなものがあるかについてはウィーン売買条約が参考になります。この条約は動産の売買(物品売買)に関するものですが、売主と買主の義務に分けて規定しており、その義務に違反した場合、相手にどのような権利が発生するかを売主買主に分けて規定し、最後に共通の規定をしめしています。

~英文契約書独自の言い回し~

英文契約書で使われる言葉についても、独特なものがあります。例えば「may」は「することができる」といった権利があることを意味し、「shall」「will」は「しなければならない」を意味します。